図面とは部品の形状を2次元(紙上)で表現したもので、図面を見るだけで部品形状、加工情報、検査方法、その他の情報を読み取ることができます。
機械製図とは、その設計したアイデアを具体的に形にするためのユニット部品を、どの様に加工し組み立てていくかを明確に製作者に指示する図面を作成する作業です。
また図面の表現方法はISOやJISなどで規格化されており、世界共通言語として流通させることもできます。この記事では、全社で流通している情報の共有化に活用されている図面の役割について解説します。
図面の役割は、部品形状を表現する以外にも色々あり、部品の設計や手配において重要な設計伝達手段として利用されています。3次元単独図への置き換えがなかなか進んでいないのも、図面が多く利用され続けている事を裏付けています。以下にその役割を4つに分類します。
図面に三角法などの投影方法を使って、部品の形状を正面、平面、側面の各方向からの視点で描くことで、第3者に部品形状を正確に伝達することができます。
形状を明確に表し、これに寸法や加工、熱処理など製作に必要事項を記入し図面を完成させます。
また必要に応じて3平面では表現できない部分は、断面図、詳細図、等角投影図などを追加することで正確に伝達することができます。
部品を手配する場合は図面が利用されます。どのような部品形状を製作するかを相手に100%伝える必要があるためです。購買部門は図面を利用してメーカに製作の可否を問い合わせたり、見積もりを取ったりしますので、図面の描き方次第で見積もり金額が大きく変動する場合もあります。たとえば寸法公差を厳しくすると部品形状が同じでも見積もり金額が跳ね上がります。
購買部門は図面を利用して部品を手配しますので、図面は契約書としても機能します。図面の通りに部品を製造する必要があるのです。もし寸法などが図面通りになっていない場合には契約違反として部品の納品を拒否することができます。
機械設計図面は、構想図、組立図、部品図、員数表の4種類で構成されます。
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図面を正しく取り扱う能力は機械設計において必須なものとなります。図面は情報を正確に共有するための方式ではありますが、それを取り扱う人が適正な能力を持っていないと部品が仕様通りに作れなくなってしまいます。
以下に図面を取り扱う上で必要な能力とその必要性についてまとめます。
三角法で部品の投影図を描く時は、頭の中の3次元部品を3方向の視点で分解して正確に描く必要がありますが、これには練習が必要です。誤った投影(ありえない形状)を描いてしまった場合には検図で指摘されますが、ありえる形状で投影を誤った場合にはそのまま手配されてしまいます。
JISに則った図面を読むことを、読図(どくず)といい、製作者側は製図者の意図を理解する読図力が必要です。三角法を理解して3方向の視点から描いた3つの絵を見て、頭の中で3次元の形状を正確に作り上げる必要があり、個人のスキルのばらつきで同じ図面を見て各々が違う形状を想像してしまう事があります。
また設計が忙しい場合には、長さ違いの類似部品の図面を描く際に外形図の長さを書き換えずに長さ寸法だけ編集することがあります。これは図面として成立するのですが、加工現場、製造現場を混乱させる原因となります。
製品を仕様通りに作るためには情報を図面上に正しく表現することが必要ですが、人が扱う中でどうしてもミスは発生してしまいます。そのため各工程でその図面が仕様や製図の規格に合致してるかをチェックする(検図する)必要があります。検図は図面を作成した段階、図面からものを作成する段階、ものが出来上がった段階等ミスの発生しやすい要所ごとに行うことが重要です。
製品開発から量産にかけて重要な役割を持つ図面ですが、近年は図面レスが加速して2D図面がその役割を終えようとしています。図面に取って代わるのがMBDと呼ばれる3D図面です。3D図面は製作者の指示通りの形状、寸法で物を立体的に表現することができる上に2Dの制作用図面への落とし込み、変換作業もソフト上で行うことができるため、従来の設計手法よりも汎用的で素早く図面を作成できます。