PLCとは工場の環境に対応した特殊なコンピュータのことです。プログラマブル・ロジック・コントローラの略称であり、従来のリレー回路を用いた電気制御をデジタル的に代替するために開発された制御デバイスで、シーケンサと呼ばれることもあります。
そもそもPLCは商品名なので本来制御デバイスの総称はシーケンサという言葉が正しいですが日本の生産現場ではPLCが使用されることが多かったためPLC=制御デバイスという認識で使用されることがよくあります。
一言で「機械を制御する」といっても具体的にイメージはつかみにくいかもしれません。しかし難しく考える必要はなく、基本的には「AをしたらBをする」「CになったらDをする」と言った命令の組み合わせで制御します。
このようなシーケンサー制御はMIRAI-LABで扱っているロボット自動化設備においても多用されており、いわば自動化設備の指揮者としての役割を担っています。
※ロボット自動化に関する記事はこちらから
工場内で使用されている装置の多くがPLCを用いて制御されており、システムインテグレータにとってPLCのプログラミング能力は最重要項目であるといっても過言ではありません
電気機器の制御を実施することが可能な他のデバイスとして組み込みボード(マイコンボード)があります。しかしながら、工場向け産業機器はその多くがPLCによって制御されています。
PLCはそれらの産業用機器に必要な機能に特化した制御デバイスです。特に堅牢性、信頼性、保守性が非常に高いのが特徴です。組み込みボードはPLCに比べて部品としてのコストは安価で、信頼性も高く、省スペースでの搭載が可能ですが、保守性という点でPLCに劣る部分があります。
PLCは大きく分けて、ブロックタイプとパッケージタイプの二種類があります。
PLCの選定を実施する際は、PLCだけで考えるのではなく、PLCに接続する機器との相性なども考慮する必要があります。
日本におけるPLCソフトウェア開発において最も使用されているプログラミング言語はラダー言語と呼ばれるものです。
ラダー言語は、シーケンス図法という電気回路を図示する手法をもとに開発された言語です。そのため、電気回路に関する知識を有する技術者にとってラダー回路は直感的に理解しやすいものとなっています。PLCを利用する電気系技術者は元々C言語などの英文を利用した開発環境に慣れていなかったため、ラダー言語がPLC開発環境におけるスタンダードになったといわれています。
国内の主要なPLCはそのほとんどがラダー言語での開発が可能なので、ラダー言語さえ理解していれば、ある程度どのメーカのPLCでも利用することができます。
だが、システムインテグレータによって得意なPLCというものが必ず存在します。ラダー言語の基本的な部分はどのメーカーも共通ですが、実行コマンド名や接続方法が異なるためです。
PLCの選定方法はPLCから選ぶか、周辺機器から選ぶかで大きく異なります。
前記したように、産業機器は保守性が非常に重要であるため、工場によっては使用するPLCを一つのメーカーで統一している場合もあります。こういった場合はそのメーカーのPLCの中から適切なスペックのPLCを決定することになります。
逆に、使用するロボットやカメラ、ネットワークに合わせてPLCを選定する場合もあります。先に使用したい外部デバイスが決定しているのであればそれに合わせてPLCを決定するというわけです。
納入先のメーカ指定もなく、使用するデバイスも決まっていない場合は、装置を製作するシステムインテグレータが自社の得意とするメーカPLCを利用したり、中間の技術商社が取り扱っているPLCを利用するということになります。
PLCの国内市場については、出荷台数こそ微増に留まるもののIoT化に伴い高付加価値化が進んでおり単価は増加傾向にあります。また、日系企業の海外生産比率の高まりやPLCメーカーの海外進出に伴い海外への出荷も増えており、長期にわたりPLC市場は拡大傾向を維持しています。
PLCメーカーについては、日本では三菱電機が大きなシェアを獲得しており、三菱電機の「シーケンサ」は非常に知名度が高いです。また、欧州ではドイツ企業のシーメンス、米国では米国企業のRockwellが大きなシェアを持っており、製造業と深い関わりのあるPLCはその地域産業に密着したサポートの行える地元の企業が大きなシェアを持つ傾向にあります。
三菱電機
三菱電機は国内外で圧倒的なシェアを誇るPLCメーカーで、国内ではPLCのデファクトスタンダード的立ち位置となっています。製品としては「シーケンサMELSECシリーズ」を中心に、パッケージ型とビルディングブロック型を幅広く備えています。信頼性・技術力共に高い水準が保たれており、世界的にも一定のシェアを獲得しています。
PLCの仕様自体は三菱電機の独自規格が用いられているものの、広く普及していることから「シーケンサのプログラミングに慣れている」エンジニアも多いのではないでしょうか。PLC黎明期から国内で大きなシェアを持ち、日本の産業を支えてきた実績もあることから、日本企業のニーズに合致したサポートが行える点も三菱電機のPLCの強みになっています。
シーメンス
世界トップクラスのPLCメーカーといえば、ドイツのシーメンスです。欧州ではトップシェア、米国でも大きなシェアを誇っており、世界のあらゆるニーズに応えられるPLCの「SIMATICシリーズ」は日本国内でも存在感を発揮しています。製品としては、パッケージ型・ビルディングブロック型・ソフトウェア型などを広く取りそろえ、通信能力を高めた分散型なども提案しています。
世界中で展開していることから海外の独自規格に対応した製品などもそろえており、支店からのサポートも受けやすく、海外に工場を置く場合には重宝されるメーカーです。国だけでなくシーメンスのPLCが使われる業界や機械の種類も多岐にわたるため、ほかのメーカーでは対応できないような状況であっても、それに合った製品を提供できるのは大きな強みと言えるでしょう。
オムロン
三菱電機に次ぐ、国内PLCメーカーがオムロンです。オムロンはPLCだけではなく関連するセンサーやモーター系のシェアが高く、品質の良い産業機器を導入する際に相性の良いオムロンのPLCが選ばれる事が多いです。
また、オムロンはセンサー類のIoT化も進んでおり、PLCを生かしたIIoTプラットフォームの構築など、新しい施策を積極的に推し進めているのも特徴となっています。さらに、各種規格を国際標準にあわせた製品なども投入するようになっており、海外展開する場合には互換性や移行に伴うトラブルなどが起こりにくくなるかもしれません。
PLCの製品スペックはいくつかの要素があります。適切スペックのPLCを選定する際にそれらの要素を考慮する必要があります。PLC項目の中でも重要な箇所を抜粋し紹介します。
入出力点検
PLCに備わっているI/O点数( Input:入力/ Output:出力)のことです。センサなどを接続できる数に影響するため、非常に重要です。
パッケージタイプのPLCでは、I/Oが組み込まれており、I/O 点数によって、PLCの型式が違います。ビルディングブロックタイプのPLCでは、入出力点数にあわせたI/Oユニットを選定します。
電源
PLCを動作させるために必要となる電源。入出力電源とは異なる場合があるため注意が必要です。一般的には、AC100~200V、DC12~24Vがあります。
端子台タイプ
I/O端子台のタイプを指します。ネジ式端子台、コネクタ式端子台、バネ式端子台などのタイプが存在します。
入出力方式
出力はトランジスタ出力かリレー出力か、入出力はNPN方式(シンクロジック)かPNP方式(ソースロジック)かを示す項目です。
プログラム言語
対応している開発言語。ラダー以外にはST言語、FBD言語、SFC言語、IL言語などがあります。
プログラム容量
一つのPLC内で作製できる処理ステップの数を示した項目です。
デバイス点検
PLCのメモリ上で設定できる内部デバイスの点数を示した項目です。内部リレーや、タイマ、カウンタなど様々な内部デバイスが存在します。
搭載サポート
PLCに搭載されている接続ポートなどを示した項目です。EthernetやRS-232Cなどの接続ポート。ユニットなどで拡張することができます。
停電保持
時計データなどの永続的に保持しておきたいデータを停電状態で保持できる時間。
以上のように、制御盤設計においてPLCは重要な機器となっています。そのためPLCの理解を深めることは、制御盤設計の能力を大きく向上させることにつながります。制御盤設計を行う際にはPLCをどのように組み込んでいくかが電気設計の大きなポイントになるでしょう。
【電気設計とは?】作業内容や基礎知識について