「もののコストと品質の80%は設計で決まる」といわれるほど設計はシステム構築にとって重要な作業です。
システムインテグレータにおける設計と製品を作るために必要な機械システムの要求をユーザから聞き取り、その要求を満足するように、環境や規制などの制約条件の下システムを理論立てて作るという作業をいいます。その中でもどのような方法で自動化をするのかという点を機械的に検討して、製作に必要な設計図を描いていくのが機械設計と呼ばれます。
ちなみに設備をどのような考え方で動かすのかをソフトにプログラミングする作業は制御設計と呼ばれ区別されています。
今回の記事では設備制作における機械設計の役割と、そのために必要な知識について紹介していきます。
まず大まかにロボットシステム構築のための作業工程について説明します。ロボットシステムの構築は、ユーザー企業とロボットシステムインテグレータとの共同作業で実現していくもので、各工程では両社が密接に連絡を取り合って実施していきます。
自動化のニーズ、必要要件をまとめるところから始まり構想や仕様決めを行って実際の設備制作に入っていきます。
設備が完成されたら、テスト稼働等を経て機能的に問題が無いかを確認し、実際の運用をしていく流れが一般的です。
では自動化設備の制作工程の中で機械設計が行う役割にはどのようなものがあるのでしょうか?
まず、自動化設備を作るための設計プロセスとして、下記の3つがあります。
3Dモデル化や図面化し加工、組立のし易さ、制度の出し易さを検討します。概念設計に沿って、開発する機械の構造や使用部品を決定します。
機械設計の作業をするためにはどのような知識が必要なのかを紹介していきます。
機械設計のために必要な知識として、機械工学(力学、材料力学、機構学、機械材料、加工、工作知識、締結機械要素、伝動機械要素、駆動方法、配管、接合方法、機械製図)はもちろんですが、電気・電子工学、情報工学、さらには特許や法規などに関する知識も必要となります。
機械製図とは、その設計したアイデアを具体的に形にするためのユニット部品を、どの様に加工し組み立てていくかを明確に製作者に指示する図面を作成する作業です。
JISに則った図面を読むことを、読図(どくず)といい、製作者側は製図者の意図を理解する読図力が必要です。
設計者は設計したものが正しく機能するか妥当性検証をする必要があり、その能力も必要となります。
システム構築のフローでは、設計図面をもとに、材料を加工し部品製作し、メーカ購入品と組み合わせて機械(ユニット)を作り、機械(ユニット)を組合わせてシステムを完成させます。
その後、電気配線や各種配管を行い、動作テストを行ってユーザ要求性能や仕様にもとづき設計した機能、性能が満たされているか、その性能のバラツキが許容値内を満足しているかの検証を行います。
条件が満たされていない場合は、設計時の何が原因であるか設計根拠(計算、シミュレーション)を分析し、原因をつきとめて、設計値に原因を反映し再度検証を行い、妥当性を検証することとなります。
機械設計をした内容は最終的な部品として加工するため、後工程へ設計図面にして渡す必要があります。そのため正しく設計図面を作成する知識が設計担当者には必要となります。
機械設計図面は、構想図、組立図、部品図、員数表の4種類で構成されます。
機械設計は使用する部品や製作品がどれくらいのコストでできるのかという原価意識も必要です。構想段階で営業担当者と相談しながら最適なコストで自動化を実現できるかどうかを技術的な側面から考えられるのは機械設計に必要な能力といえます。